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付着塵の性質②


APC(付着塵カウント装置)の特徴の一つは最終的な異物の付着量だけでなく時系列を伴ったデータが得られる事で、これを利用した測定結果は以下のようなグラフとなります。

 

 

このグラフはAPCを空気清浄機を運転した室内(8畳間)に設置し、約3時間30分間測定した結果で、測定中30分おきに入室しAPCの周りを静かに1分間歩行しています。青線/緑線/赤線はS/M/L各サイズの付着塵カウント数を表していますが、入室のタイミングで階段状に増加している事がわかります。

 

このようにAPCの測定結果はプレート上に落下して付着した異物量の合計ですので、何かイベントがあると傾斜が変化してこのような階段状のグラフとなります。一方このデータからノイズを取り除いて傾斜の強さを取り出す(微分する)と次のようなグラフが得られます。

 

 

このグラフは「1秒間に・1㎡当たり何個の異物が付着したか」という換算値を表示しており、これはいわば「異物の付着速度」という事になりますが、これも30分毎の入室タイミングに合わせて変化しています。前回の異物サイズの相関から、S/M/Lサイズはそれぞれ球形ビーズ換算で20〜50μm/50〜250μm/250μm以上と考えられますので、単に周囲を歩行するだけでも非常に多くの粗大な異物がプレート上に落下している事が分かります。まさに人間が最大の異物発生源の一つになるという典型的な事例です。(この事例では私が犯人なのですが) 

 

一方この測定時には浮遊塵測定装置もAPCの隣に設置して、5/20/50μmの浮遊塵量の測定も同時に行っており、この測定結果は次のようになります。

 

 

このグラフでまず確認できるのは5μmの浮遊塵(青線・第2軸)が概ね50個/CF以下に収まっており、30分毎の入室後安定期に入ると10個/CF以下になる事から空気清浄機がしっかりと機能している事が分かります。ちなみに空気清浄装置がない場合、日本国内では5μmの浮遊塵は通常数100〜1000個/CF程度となる事が多く、しっかりと管理された塗装ブース(中性能フィルター設置)等のクリーンエリアではこれが0〜9個/CFにまで下がります。

 

細かく見ていくと5μmの測定値は浮遊塵と同様30分ごとの入室のタイミングで増加する傾向がある反面、20μmと50μmの浮遊塵(緑線&赤線)は時折3〜7個/CF測定されるのみで殆どの時間はゼロとなっており、入室タイミングとの明確な関連は見つけにくくなっています。

 

更に一般的な塗装で確実に異物不良になる事が多い50μm以上の異物に焦点を絞ると、APCではMサイズとLサイズがこれに相当し、3時間30分間の測定後に約150個がカウントされています。一方浮遊塵としては3個/CFのカウントが2回記録されているのみです。

 

浮遊塵は空間内の異物量を測定し、APCは平面上で測定する訳ですからそもそも測定の次元が異なるため、それらを直ちに比較するのは無理があります。しかしながら同時に測定した結果の”3個/CFが2回”と”150個”という値の間には違和感があるのも事実です。

 

なぜこの差異がなぜが生まれるのか?

次回はこの原因について考察を深めてみたいと思います。