見える化手法

微差圧ロガー

第3回 「データロガー」


「改善トピックス」の第1回で見える化による改善ステップを説明させていただきましたが、

今回はその中に登場した「定量化」したデータの「自動取得」を可能にする、データロガーについて詳しく述べさせていただきます。

 

古い話になりますが、私が技術者として仕事を始めた頃には温度・湿度の記録は、原則的に人が計器を読み取って紙に記録するという方法で、ある一定期間のデータを定期的に取るという事は多くの労力が必要でした。

温湿度環境の管理が特に必要な場所には、回転する円筒状の紙にペンが温湿度を記録していく、機械式の記録計というものが設置される場合がありましたが、高価で比較的大型の装置であり、様々な改善の用途に気軽に使用できるものではなかったように記憶しています。

 また結果を分析するには、記録計の紙から数値を拾ってパソコンに入力する必要があったため、例えば24時間分の記録を1分間隔のデータ化するのに1日がかりというような、冗談のような事を実際に行った事もあります。

 

私にとってこの状況を一変させたのは、1995年頃株式会社T&Dから「おんどとり」が発売された事で、安価・コンパクトで長期間希望する周期で温湿度を記録でき、しかもデータを直接パソコンにダウンロードにすぐに分析できる事は、正に衝撃的な革命的出来事でした。

以来会社で使用する以外にも、個人用としても多くの「おんどとり」シリーズを愛用させていただいております。

温度・湿度はごく基本的な測定値ですが、これに「時間軸」が加わる事で得られる情報、例えば予想以上のばらつき、周期的な変動、突発的な変化といった現実の把握と分析は現在の改善活動には不可欠なものでしょう。

 

温湿度以外にも、外部出力をもった計器類と電圧(または電流)ロガー、およびバッテリーを接続する事で容易に時間軸をもったデータを収集する事が可能になります。 

このページ先頭の写真は、クリーンゾーンなどの圧力を測定するための微差圧計の出力を、電流ロガーで自動記録する装置で、バッテリーによって4時間程度の連続駆動が可能なため、気軽に現場に持ち込み圧力差(微差圧)や変動幅の確認ができます。

 

この装置はこれまでの私のクリーン化に関する業務の必要上生まれたものですが、世界中には様々な現場があり、無数のオリジナルロガーの必要性と活躍する場所があると思います。

これまではその多様性ゆえに、計器メーカーが取り扱えなかったオリジナルロガーをそれぞれの現場が作り出し、これによっていち早く新しい視点を得た企業が優位性を獲得する事例も益々増えてくるでしょう。

 

既製の計器と電圧(電流)ロガーの組合せ以外にも、最近では「プロトタイピング」と呼ばれるマイコンベースの装置開発の事例も増えています。

近年流行のIoT(Internet of Things)も、基盤となるマイコンの低価格化や高性能化、様々なセンサー類が世界中から調達可能になる事などにより、オリジナルロガーの実現を後押ししており、こうした手法では既製品の組合せよりも安価でコンパクトな装置の製作が可能なケースが多くあります。

プロトタイピング手法とその適用例については、また回を改めて説明させていただきます。