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仮想と現実の架け橋

今や私たちの生活にとって無くてはならないものとなったパソコンやタブレットなどの情報処理装置は日々進歩を遂げていて、安価な製品でもひと昔前から見ると夢のような能力を持つようになっています。

 

こうした装置の中で処理されるいわゆるバーチャルな世界は、おなじみのインターネットなどを通して私たちの生活を便利で快適なものにしている他にも、例えば近年大幅に精度が向上した天気予報などのシミュレーション技術などにも利用され、もはやこれなしでは生活に大きな支障がでるでしょう。

 

このように高性能な情報処理装置ですが、一方でこうしたパソコン類がどうしても苦手とする部分があります。

 

ここに1個のLED素子があったとします。多くのLEDは3V程度の直流電流を流せば点灯しますので、乾電池を2本直列に繋ぐだけでまばゆい光を発生します。実際には電池の向きや必要に応じた抵抗を追加する事など若干の注意点はありますが、基本的にはだれでも簡単に点滅させる事ができます。

 

 

しかしこれをパソコンやタブレットにやらせるするとどうでしょう。例えばどのパソコンにもついているUSB端子からは5Vの直流電圧が得られます。USB端子に接続するファンなども市販されている事から判るように、理屈上は必要な抵抗を介してこれに繋げばLEDが点灯します。

 

ただこれはもちろん正規の使い方ではないですし、抵抗値を間違って過電流が流れたり、誤ってショートさせたりしたら高価なパソコンが壊れるかもれませんので、LEDを点灯させるためにわざわざそんなリスクを犯す人は少ないでしょう。それにこの方式ではLEDが点灯するだけで、必要に応じて点滅させたりといった操作を行う事は(できない事はないにしても)非常に難しいでしょう。

 

 

もう一つの例として手元に温度センサがあったとします。

 

このセンサは様々な家電に内蔵されているものと基本的に同じものですが、現在はインターネット経由で誰でも入手する事ができます。コストも数百円と非常に安価です。

 

センサの接続も3本の端子を電源(DC5V)、接地、信号線にそれぞれ接続するだけで動作します。しかしこのセンサをパソコンに直結してデータを得る事は出来ません。

 

このようにインターネットが一般的になってバーチャルなパソコンの世界が大きく広がった現在でも、パソコンから現実世界のLEDを点灯させたり、センサから現実世界のデータを得たりという点ではまだまだ不自由な部分があります。

 

この不自由を解消し、仮想(バーチャル)と現実の架け橋になり、IoTの中核にもなるのがマイコン(マイクロ・コンピュータ)です。またこうした分野はコンピュータと実際の物理的な世界を繋ぐという意味で「フィジカル・コンピューティング」とも呼ばれます。

 

マイコンという言葉自体は約半世紀前からありますが、当初は高価なうえに機械語という難解な言語を操れる限られた人の道具でした。これに比べて現在のマイコンは嘘のような簡単さで仮想と現実の間を結んでくれる点や、圧倒的なコストパフォーマンスの違いから、名前は同じでも全く違う装置だと言っても良いかもしれません。

 

次回からこのマイコンの簡単な利用例や、このページのテーマである「見える化」への応用例をご紹介します。