前回から続けます。
一連の実験では付着塵の測定に以前このコーナーでも紹介している付着塵カウント装置(APC)を使いますが、その性質をより詳細に見るためサイズ分級を細かくし、20μm以上/50μm以上/100μm以上/200μm以上/500μm以上の計5クラスとしています。
実験は以下のような環境で行います。最初の実験でポイントとなるのは床面にサーキュレーターを置き、室内の空気を強制的に攪拌しながら測定を行う点です。この実験では一般的な作業室の環境を想定して空気清浄等は行っていません。
このサーキュレーターは例えば現場で作業を行う場合など、作業者の歩行や動作によって引き起こされて異物を舞い上げる気流を模擬的に表現するため水平から15°下向きに設置し、水平方向に約80°首振りしながら運転します。サーキュレーターの回転数は4段階に調整可能で、風速と実験の手順は以下の通りです。
この実験は各風速と検出された付着塵のサイズと量の関係がどのようになるのかという点を調査するために行ったものですので、バラツキのある一般的な空気環境の中で傾向を把握するためにサンプル数を多く取る必要があり、約1ヶ月の時間を要しています。
結果を分かり易くするために今回はPDC(Particle Deposition Class)との対比で見ていきます。PDCは製品表面などの清浄度評価のための規格として用意されているものの一つです。
どこかで見覚えのある表ですね。はい、浮遊塵の清浄規格であるISO-14644-1などと似た雰囲気の規格です。単位が”個/㎡/h”である点が特徴的で、1平方メートルの範囲に1時間当たりどれだけの異物が付着するかを異物サイズ毎に規定しています。
規格の全体像を見易くするために両対数のグラフ上にプロットしてみましょう。
こうして見るとこの規格の考え方が一目瞭然です。
浮遊塵と同じく対数グラフ上では各クラスのサイズ毎の異物数は直線状に配置されています。浮遊塵の場合はこの便利な規格のおかげであるサイズの異物数が分かれば他のサイズについても大凡の見当をつける事ができました。
さて、ここで問題になっているのは付着塵の場合にも浮遊塵のように、あるサイズの異物の数から他のサイズの異物数の見当をつける事ができるのかという点でもあります。言い換えれば付着塵の場合にも実測数が規格の傾斜に沿ったプロットになるのかという問題です。
この稿をご覧の皆さんはどのような結果を予想されますか?
次回実験の結果を説明します。