前回「見える化」の両輪の一つである「可視化」の話をしましたので、今回はもう一方の「定量化」のお話をさせていただきたいと思います。
まず私の考えとして、「定量化できない事象は、一時的な改善はできたとしても、継続的な維持管理ができない」という前提があります。
例えば、清掃によって一時的にクリーン度が上がり、異物による不良が減少したとします。当然室内も綺麗になって、ツールのページで紹介させていただいているような可視化照明で目視確認をしても異物の浮遊量も減っているとします。
これももちろん素晴らしい改善なのですが、多分1週間後か1ヶ月後、次のような会話が交わされる事になるかもしれません。
A「最近また不良が増えているんだけど、清掃はちゃんとやっているよね?」
B「もちろん、ちゃんとやっていますよ」
A「可視化照明でみると異物の浮遊量が増えている気がするんだけど・・・」
B「私はあまり変化がないような気がするんですが・・・」
A「・・・・」
B「・・・・」
こうした会話、なにか覚えがありませんか?私は何度となくあります。
問題は2つありそうです。
一つは二人の間で「ちゃんと」の意味が曖昧な事と、「気がする」といった印象レベルでの話をしている事です。
「ちゃんと」した清掃はまた別のお話になりますが、今回は「気がする」を何とかする方法を考えたいと思います。
可視化照明などによって、これまで目に見えなかった事が見えるようになるという事は確かに重要な進歩で、改善の重要な手掛かりになるのですが、この状態ではまだ「気がする」レベルの会話になります。
何しろ見た目の「多い」、「少ない」は個人間で感じ方の違いがありますし、同じ個人でも時間の経過によって変化するものです。
私も1ヶ月前の浮遊異物の量を見た目で正確に判断する自信は全くありません。
可視化の次のステップとして定量化を行う必要があります。
上の例で言えば、異物の浮遊量を測定できれば「異物が多くなった気がする」が、「異物が10個から15個に増えている」という会話ができるようになり、原因追求もより具体的になっていきます。
もちろん全ての事象が簡単に定量化できる訳ではありませんが、現在は様々な既製品の測定器を利用して測定する他にも、様々なセンサーを組み合わせてそれぞれの工程に合った測定器を自ら作る事も可能です。
こうした測定器は新たな視点を提供するものだとも言えますが、工場の特性は多様であり、管理するべき特性値も千差万別ですので、工場独自の新たな視点を持って、それを改善に結びつける事は強力な武器になるでしょう。
ありきたりの視点(測定値)から得られるデータからは、ありきたりの答えしか導き出せないかもしれません。
以下は先日書店で見つけた書籍ですが、技術的な見地よりもう少し大きな枠組みの中で、定量化の考え方と意義が端的にまとめられた好著です。
「ハカる」力(ちから) 三谷浩治著
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